これはライティングの作例として書いたサンプル記事です。発注を受けて制作したものではありません。記載の数値は、本文末尾の出典に記した公的資料を2026年10月18日に実際に開いて確認したものです。
調べて書く工房|記事サンプル ← 記事一覧

EC・ネットショップ

「日本のEC市場は何兆円か」を、一次情報で確かめる

EC関連の記事には、ほぼ必ず市場規模の数字が出てきます。 ところがその数字は、出典をたどると「何年のデータか」「何を含んだ数字か」が食い違っていることがあります。 この記事では、よく引用される数字を公表元まで遡って確認し、どこで取り違えが起きるかを整理します。

約2,400字 公的統計の読み取り 確認日:2026年10月18日

結論:2024年のBtoC-EC市場は26.1兆円。ただし「3分野の合計」です

経済産業省が公表している「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」によると、 2024年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は26.1兆円で、 前年の24.8兆円から5.1%増えています[1]。

あわせて、同じ調査のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は514.4兆円(前年465.2兆円、前年比10.6%増)、 EC化率はBtoC-ECで9.8%(前年比0.4ポイント増)、BtoB-ECで43.1%(同3.1ポイント増)です[1]。

ここで最初の注意点です。26.1兆円は「物販系」だけの数字ではありません。 この調査のBtoC-ECは、物販系・サービス系・デジタル系の3分野に分かれており、 26.1兆円はその合計です。

よくある取り違え 「日本のネット通販市場は26兆円」と書かれている記事がありますが、 この26.1兆円には旅行サービスや金融サービス、オンラインゲームなどが含まれます。 「ネット通販=物販」という意味で使うと、数字が合わなくなります。

物販系の内訳:2兆円を超えるのは4カテゴリー

物販系分野の内訳のうち、公表資料が「割合が大きい」として挙げているのは次の4つです[1]。

カテゴリー2024年のBtoC-EC市場規模
食品、飲料、酒類3兆1,163億円
衣類・服装雑貨等2兆7,980億円
生活家電・AV機器・PC・周辺機器等2兆7,443億円
生活雑貨、家具、インテリア2兆5,616億円

金額の大きさとEC化率は、順番が一致しません。 EC化率が高いのは「書籍、映像・音楽ソフト」(56.45%)、 「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」(43.03%)、 「生活雑貨、家具、インテリア」(32.58%)です[1]。

つまり市場が大きいカテゴリーと、ネットで買われやすいカテゴリーは別ということです。 「食品、飲料、酒類」は金額では最大ですが、EC化率の上位3つには入っていません。 出店するカテゴリーを検討する文脈では、この2つを分けて書く必要があります。

サービス系とデジタル系も、内訳を見ると中身が違う

サービス系分野では「旅行サービス」が3兆5,249億円と大きな割合を占めます。 公表資料は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で大きく落ち込んでいた 旅行サービス・飲食サービス・金融サービスが、 前年・前々年に続いて大きく回復したと説明しています[1]。

デジタル系分野では「オンラインゲーム」が1兆2,553億円と大きな割合を占めますが、 こちらは前年比でマイナスです[1]。 3分野の合計が伸びているからといって、全部が伸びているわけではありません。

「最新の数字か」は、公表ページで確かめる

市場規模の記事で最も起きやすい誤りは、古い年度の数字を最新として書いてしまうことです。 この調査は毎年度実施されていますが、公表の時期は年によってずれています。

経済産業省「電子商取引実態調査」のページを2026年10月18日に開いて確認したところ、 掲載されている最新の調査は「令和6年度調査」で、公表は令和7年8月26日でした[2]。 同じページには令和5年度(公表:令和6年9月25日)、令和4年度(公表:令和5年8月31日)が続いています[2]。

この記事の時点で確認できなかったこと 令和7年度(2025年度)の調査結果は、確認時点では掲載されていませんでした。 つまり本記事の26.1兆円は「2024年の実績」であり、2025年の数字ではありません。 記事を公開する時点で改めて同ページを開き、新しい年度が出ていないかを確認してください。

確認の手順(そのまま使える形)

  1. 公表元の一覧ページを開く。 いきなり報告書PDFを探さず、年度の一覧が並んでいるページから入ります。 どの年度が最新かは、ここでしか分かりません。
  2. 公表年月を控える。 「令和6年度調査」は2024年のデータですが、公表は2025年8月です。 年度名・データの対象年・公表年月は、三つとも別物として扱います。
  3. 数字と一緒に「何を含むか」を控える。 26.1兆円なら「BtoC-EC・3分野合計」。この但し書きがないと、後から使い回せません。
  4. 二次情報の要約で止めない。 まとめ記事や検索結果の要約は、カテゴリーが一部しか拾われていないことがあります。 実際、本記事を書く際に参照した検索結果の要約では、2兆円超の4カテゴリーのうち 2つしか挙がっていませんでした。
  5. 確認した日付を記事に残す。 統計は更新されます。「いつ時点の確認か」が書いてあれば、 読者も編集者も、更新が必要かどうかを自分で判断できます。

まとめ

EC市場の数字は、どの分野を指しているかといつのデータかの2点で間違いが起きます。 公表元の一覧ページから入り、公表年月とデータの対象年を分けて控え、 確認日を記事に残す。これだけで、後から直す手間がほとんどなくなります。

出典

  1. 経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」(令和7年8月26日)
    https://www.meti.go.jp/press/2025/08/20250826005/20250826005.html 確認日:2026年10月18日
  2. 経済産業省「電子商取引実態調査」(調査年度の一覧ページ)
    https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/ie_outlook.html 確認日:2026年10月18日(掲載されている最新年度が令和6年度であることを確認)